めちゃくちゃお得に大学院生活を送るための3か条
大学院生の悩みで上位に来るものといえばやはり金銭面ではないでしょうか。
しっかりと情報収集して様々な制度を活用すれば、経済的な支援を受けるチャンスはたくさんあります。
僕自身、かなりお得に修士課程を卒業することができましたので、活用した制度などをご紹介します。
授業料免除
僕の場合は幸か不幸か、理系の大学院まで来るような人の中では親の年収が低めなので、修士2年間の授業料が全額免除になりました。ちなみに学部(地方国立大学)時代も、申請しなかった1年生を除いてずっと授業料免除だったので、修士卒業までの6年間で53万円しか授業料を払っていないことになります。源泉徴収票や所得証明を揃えたり手続きは面倒ですが、どの大学にもこういう制度はあると思いますので、ダメ元でも申請する価値はあると思います。
日本学生支援機構(JASSO)奨学金及び返還免除
これは多くの人にとって馴染みがあるかと思います。僕も第一種(無利子)の奨学金を120万円借りていました。
ここからが大事なのですが、大学院で借りる第一種奨学金には「特に優れた業績による返還免除」という制度があるのをご存知でしょうか。
大学院で第一種奨学金の貸与を受けた学生であって、貸与期間中に特に優れた業績を挙げた者として日本学生支援機構が認定した人を対象に、その奨学金の全額または半額を返還免除する制度です。
学問分野での顕著な成果や発明・発見のほか、専攻分野に関する文化・芸術・スポーツにおけるめざましい活躍、ボランティア等での顕著な社会貢献等も含めて評価し、学生の学修へのインセンティブ向上を目的としています。
貸与終了時に大学に申請し、大学長から推薦された人を対象として、本機構の業績優秀者奨学金返還免除認定委員会の審議を経て決定されます。(日本学生支援機構ホームページ, 「特に優れた業績による返還免除」より引用)
一般に、各研究科の上位30%に入ると全額or半額の返還免除が受けられると言われています。修論で死ぬほど忙しいM2の1月頃に申請しますが、このとき修士課程の研究内容や業績の証明書をまとめて研究科に提出し、修論審査の成績も踏まえて研究科で推薦者が決定されます。推薦されてしまえばほぼ確実に返還免除がJASSO側から認定されます。
僕は半額免除を受けることができました。ちなみに修士課程までの業績は論文0、国際学会ポスター発表1回、国内学会ポスター発表1回、その他学振に採用されたこと(外部資金の獲得)、TAの勤務経験、若手の会で院生の交流イベント運営に携わっていることをアピールしました。後の修論審査では、専攻内3位で奨励賞を受賞しました。
給付型奨学金
返済の必要がない給付型の奨学金も色々あります。私は岩垂奨学会の奨学金で65万円の支援をいただくことができました。院への進学後すぐに学内掲示板で給付型奨学金を調べ、自分が申請可能なもので締め切りが間に合うのがこれだけだったのでとりあえず申請した、という感じだったと記憶しています。申請には研究計画書などが必要で、書類の作成はたしかに大変でしたが、これがのちに学振申請書を書く際の練習にもなりました。岩垂奨学会は東大、京大、名古屋大からしか募集していないので、東大の院へ外部進学したメリットを享受できた場面でした。
給付型奨学金には分野に特化したものや、出身地に特化したものなど様々なくくりのものがあります。自分が応募できる給付型奨学金が何で、その締め切りはいつなのかを一度調べてリストアップしておくことをお勧めします。
学振
日本学術振興会特別研究員、通称「学振(ガクシン)」。博士後期課程に進学するほぼ全ての分野の人を対象に、月20万円程度の給料(研究奨励金)と年間100万円前後の研究費を支援する言わずと知れた制度です。M2で申請してD1から採用となるDC-1と、D1、D2で申請して翌年度から採用になるDC-2とに分かれています。
僕は幸運にもDC-1に採用されました。副業禁止やそもそもの額面の少なさなど、色々言われていますが、やっぱり親に迷惑をかけずに博士課程で研究を続けられるということがもたらす精神面でのメリットは何にも替えがたいものがあることを実感しています。
採用率は概ね20%程度です。学振に関しては過去記事をぜひ御覧ください。
お得な大学院生活を送る3ヶ条
さて、これまで紹介したように色々な制度をフル活用した結果、授業料タダな上に65万円いただき、借りていた無利子の奨学金も返還免除になりそうというかなりお得な修士課程を送ることができました。さらに学振にも採用されることができました。修士からラボを変えたこともあり業績の少ない僕でもここまでできた理由を振り返り、お得な大学院生活を送る3ヶ条をお伝えしたいと思います。
1.情報収集が命
授業料免除にしても、奨学金にしても、基本誰も教えてくれないので、自分で情報収集しないことには何も始まりません。お得に院生生活を送るにはとにかく情報が命、逆に言えば知っている人だけが得をできます。この記事で紹介した以外にもたくさんの奨学金や経済援助の仕組みがあるはずですので、常にアンテナを張って調べることをお勧めします。
2.手続きの面倒さに勝つ
授業料免除であれば親の源泉徴収票や所得証明書をそろえたり、給付型奨学金なら研究計画書を書いたりと、お金をもらうための手続きはめちゃくちゃめんどくさいものばかりです。締め切り間際にかぎって研究が忙しくなったりして、もう出すのやめちゃおうと何度思ったかわかりません。ですがそのメンドクサイ数枚のA4書類が諭吉さん数十人に化ける可能性があるわけです。考え方を変えれば、面倒臭いほどライバルが出すのを諦めるので、自分が出せば採用される確率が高くなります。面倒臭さに打ち勝って、遺漏なく申請手続きをやり切りましょう。
3.研究を頑張って業績を積む(特に学会発表)
もちろん、研究を頑張って、業績があればあるほど経済支援も受けやすくなります。客観的に評価できる成果を出すことが大事ですので、論文を出せればベストですが、そこまでたどり着かない人も多いと思います。そこで、学会発表を積極的に行うことをお勧めします。学会発表はやる気さえあれば、データが少なくてもなんとかなる場合が多いですし、発表すれば業績欄に書けます。僕は指導教員を説得して国際学会に半ば強引に出させてもらいましたが、学振が取れたのもそのおかげという部分は多少あるはずです。自分の研究をアウトプットする機会は必ずその後に生きますので、積極的に学会発表に挑むべきです。
近頃はにわかに院生支援の動きが広まってきて、新しい経済支援制度もできています。
しっかり情報収集して工夫すれば経済的な負担を少なく大学院生活を送ることは可能ですよ!
学振DC-1に採用された僕が、参考にした本など紹介します
久しぶりのブログ更新です。
修士の学位を受け取り、博士課程の入試も終わり、修士課程を卒業して博士課程へ進学することが正式に決まっています。幸いなことに、学振DC-1に採択されまして、2021年4月からは生活費と研究費の支援をいただきながら今後3年間研究できることになりました。
多くの人はB4(人によってはB3)からの研究の蓄積がある中、大学院で研究室を移籍した人は研究業績を積みにくく、特にM2で申請するDC-1は厳しい戦いです。申請直前のM1の3月になってやっとデータが出始め、そこから速攻で考察して死ぬ気で申請書を書き上げました(汗) 二次審査からのギリギリ滑り込み合格で、最後はもう紙一重の世界なので、運が良かったと思います。一次審査で余裕で合格する人には実力も業績も遠く及ばないですが、申請者作成に当たって参考にしたものや戦略をまとめたいと思います。令和4年度からは学振申請書の様式も大きく変わっていますが、基本は変わらないはずなので参考までに。ちなみに、二次審査の面接はコロナの影響で中止になり、申請書の再審査という形になりました。
大上先生の学振本
学振申請者のバイブル、大上先生の有名な本です。申請書の指示に従って聞かれたことに答えていく大切さや、項目立てて見やすくレイアウトする技法を学べます。実際の申請書の例を豊富に見られるので、イメージが湧きやすくなると思います。様式変更に合わせた改訂版が発売されるようなので、そちらの版のリンクを貼っておきます!
大上先生の学振解説スライド
slideshareというサイトでは大上先生の学振申請ポイント解説スライドが公開されています。先に紹介した本と内容はだいたい同じですので、ざっと目を通しておくと良いと思います。こちらも、様式変更に対応した2022年度申請版がアップされています。大上先生仕事早すぎ!
『できる研究者の科研費・学振申請書 採択される技術とコツ』
研究費の申請書で何を書くべきなのかを深堀りして学べる本です。この本を読むと申請書の内容の充実度がグッと上がると思います。例えば、研究の背景や着想に至った経緯では、
- □□について、これまで〜なことがわかってきた。
- 一方、〇〇についてはわかっていなかった。
- だから、〇〇を明らかにしたい。
といったロジックで書く人が多いと思います。でもこれだと説得力が圧倒的に足りないんですよね。もっと書くべき内容としては、
- なぜその問題は未解決のまま放置されてきたのか?
- その未解決問題でどのような弊害が起きているのか?
- なぜ自分の研究で、これまで解決できなかった未解決問題を解決できるのか?
- その問題を解決することがどのような影響を与えるか?
などなどたくさん考えられます。申請書の余白を前にして、何を書いたらいいんだろうと手が止まってしまったときや、ブラッシュアップしてもっと内容を充実させたいときヒントを与えてくれる一冊です!
Dr.クラゲさんのyoutubeチャンネル
分類学の研究をされていて現在ポスドクをされている方のyoutubeチャンネルで、時に業界の闇に切り込んだりしつつ、熱いお話が聞けます。学振必勝講座シリーズでは、DC1 不採用となった後DC2で採用された経験をもとに、申請書作成のポイントが熱く語られています。特に、「申請内容ファイルは夢を書く場所」「大きく入って大きく出る」は名言だと思います。
令和4年度採用分から、学振の研究内容ファイルの様式がこれまでとは大きく変わりました。具体的には、枠が撤廃された他、「これまでの研究状況」を書く項目が無くなりました。さらに業績欄も無くなり「研究遂行能力の自己分析」に変わっています。志望動機、アピールポイント欄は「目指す研究者像」になり、それを実現するためにどのようなことに取り組むかまで書くようになっています。業績のウエイトが軽くなり人物像重視になったと取れるこのような変化は、コロナ禍による大学の閉鎖などの影響を強く受けた人とそうでない人の格差を無くす意義があるのかもしれません。いずれにせよ、業績が少ない人にとっては戦いやすくなった変化だと言えると思います。
様式の変化はあるものの、誰にでも伝わるように書く、読みやすいレイアウトにする、聞かれたことにきちんと答えるといった基本は変わらないはずです。上述した本などをぜひ参考にしてみてください。
『できる研究者の論文生産術』たくさん書く秘訣!
一気に肌寒くなり、卒業論文や修士論文の季節が近づいてきましたね。
文章を書くことに苦手意識があるという人がほとんどではないでしょうか。ブログを書いている僕だって文章を書くのはしんどいですし苦手です。まして、卒業がかかった論文となれば誰だって気が重いですよね。この避けて通れない「書く」という重労働をらくらくこなせるようになる方法ってあるのでしょうか?それを教えてくれるのが『できる研究者の論文生産術』(ポール・J・シルヴィア著、高橋さきの訳、講談社)という本です。

一気書き派vsスケジュール派
あなたは今まで、授業のレポートや卒業論文を追い込まれてから書く「一気書き派」でしたか?ほとんどの人がそうだと思います。一方で中にはスケジュールを決めて毎日淡々と執筆を進める「スケジュール派」も居ます。本書の要諦はとにかく、一気書き派をやめてスケジュール派になろうということです。
あらかじめ執筆のための時間を割り振っておき、手帳に書き込み、その時間帯にはきちんと執筆する。それを習慣化してしまえばよい。これだけ聞くと「それができたら苦労しないよ!」という声が聞こえてきそうですが、正論だけで突き放すわけではありません。「一気書き派」が言いがちな言い訳をひとつずつ痛快に論破するとともに、「スケジュール派」に生まれ変わるための具体的なアドバイスも豊富で、熱心なコーチに指導されているような感覚になります。
執筆を習慣化する技術
いざ計画的に書くぞ、と思い立ったら、次のステップはそれをきちんと習慣化する技術を身につけることが大切です。自分も取り入れたいと特に思った項目を紹介します。
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焦点を絞った具体的な目標を立てる
せっかく確保した執筆時間を有効に使うためには、具体的に焦点を絞った目標が効果的です。例えば卒論を書くとしたら、「少なくとも400字書く」とか「図1を完成させる」といった具合です。数字を盛り込むなどして、具体性の高い目標にするのがポイントです。小さく分割した具体的なToDoリストを書くという手法はあらゆることに効果的で、僕もよく使っています。その際のおすすめアイテムも過去の記事でご紹介していますのでぜひご覧ください!
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何字書いたかを毎日記録する
習慣化において記録というのは非常に大切です。毎日食べたものや体重を記録するレコーディングダイエットという手法がありますが要はそれと同じです。何文字書いたかを記録することでモチベーションの維持につながりますし、記録を蓄積することで自分の執筆力を客観的に把握できるので無理のない計画を立てることも可能になります。
本書で紹介されているメソッドそのものは目新しいものではありませんが、執筆を計画的に進める習慣を作ることが研究者にとっていかに重要であるか理解でき、ついつい後回しにしがちな書く作業にモチベーションを与えてくれる本となっています。
その他英語論文で気をつけるべき表現なども紹介されていて、ラボのデスクに置いておきたい一冊です!
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こちらの記事もどうぞ!
『ストレスフリー超大全』読むほど人生がラク〜になる超具体的ノウハウ本!!
『ストレスフリー超大全』ってどんな本?
あなたは何に一番ストレスを感じていますか?そのストレスから自由になれるなら、なりたいですか?
適度なストレスは生きていく上で必要ですし、全てのストレスの原因を直ちに取り除けるわけではありません。しかしストレスに強い人はストレスを上手に受け流している。ストレスを上手に受け流せるのが「ストレスフリー」な状態として、あらゆる種類のストレスに対して上手に向き合う考え方と超具体的な対処法が百科事典のように網羅された本が『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(樺沢紫苑:著、ダイヤモンド社)です。

めちゃくちゃ良い本だったので自分に刺さったところを3点ご紹介したいと思います。
孤独を癒す:大人になってから友達を作る方法
他大学の大学院に進学すると思っていた以上に友達が少なくなりました。大学時代は部活や学部の友人が自然といましたが、大学院はみんな忙しいので同じ専攻でも他のラボの学生と会う機会はなかなかありません。出身大学と地理的にかなり離れているので、学部時代の友人に会うのも大変です。孤独感は、他大院進にあたり想定していなかったデメリットでした。
そんな中、本書の「大人になってから友達を作る方法」(p.104~109)の一節にハッとしました。
「友達なんかいなくていい」「自分は1人でいるのが好き」と常に思っていると、それが非言語的に周りの人に伝わってしまいます。結果的に、「自分に話しかけてくれるな」という雰囲気がでてしまうのです。
一人っ子だったり転校生だったりした経験から自分は孤独に強いし一人でも大丈夫、と思っていましたが、それが心の閉じた「クローズマインド」の雰囲気を作ってしまい友達ができづらい原因になっているかもしれないと気付きました。大切なのは反対に「オープンマインド」つまり心を開いた状態にし、人に話しかけられた時笑顔で対応したり自分から人に話しかけることです。当たり前のようでなかなか難しいですが、積極的に遊びや食事に誘うと案外みんな来てくれるものだなと最近は実感しています。
お金の不安をなくす:自己投資は幅広く
僕は勉強のための本やセミナー参加費は自己投資としてケチらずしっかりお金を使うように意識しています。本書でもp.198~「お金の不安」を取り除く方法のなかで最も確実でリターンが大きい投資は「自己投資」であると明言しています。
ただ僕の中で自己投資といえば勉強やスキルアップのためのものというイメージでしたが、著者が考える自己投資は映画や旅行、健康、さらには美味しいものを食べたり美容院に行くといったことまで、幅広いものでした。それらのなかには今まで単なる娯楽と考えてお金を使わないようにしていたものも結構ありました。何でもそこから学びや経験を得ることができれば自己投資になりうるし、ファッションなんかもそれによって豊かな人間関係を築けるなら立派な自己投資であるわけですね。僕は研究者という、お金の不安がつきまとう職業を目指すからこそ、今のうちにきっちりと幅広い自己投資をしていくことが大切。いかにお金を使わないかを考えるのではなく、しっかりお金を使って様々な体験をし、そこから学びと経験を吸収する生き方をしていきたいと思いました。
自己肯定感を高める:まずは「自己受容」を目指そう
あなたは自分に自信がありますか?
迷わずYesと言える人って案外少ないのではないでしょうか。自信が大事とか、自己肯定感を高めようとよく言われますが、その定義は曖昧でフワッと使われていることが多い言葉です。本書では自己肯定感と自信の関係について明確な公式を提示しています。
【自信の公式】自己肯定感 X 経験 = 自信
つまり、自己肯定感を高めたうえで成功体験を積むことで自信が生まれるというわけです。しかし、現状として「自分なんか...」という自己否定感ある人が、いきなり自己肯定感を持てるなら苦労しません。そこで大切なのは、まずは「自己受容」 をしましょうということです。
自己受容とは、「今のままの自分でいい」「ありのままの自分でいい」と思える感覚のことです。自己受容とは自分を否定も肯定もしない「ゼロ」の状態。まずこの状態になれないとその先の自己肯定や自信のステップには進めません。
では「自己受容」に至るにはどうすればよいのか?著者がすすめるのは「自己受容の4行日記」です。1行目に今日あったネガティブなことを書き、それに対して「今の自分でいい」とか「それでいい」というフィードバックを書き足します。心に葛藤が生まれてもまずは自己受容の言葉を自分に投げかけることが変化の第一歩になります。2〜4行目はそれぞれ今日あったポジティブな出来事を思い出してその感想を書きます。これを寝る前に行うことで自己受容感を高めポジティブな気持ちで1日を締めくくることができ、続けていけば自己否定に支配されがちな思考回路をリセットしていくことができるのです。
こんな人におすすめ!
人間関係や家族の問題、仕事、健康、メンタル、生き方に至るまであらゆるジャンルが網羅されているので、誰が読んでも1つは刺さるポイントがあると思います。特定の悩みがある人はもちろんですが、漠然と今の生活が嫌だ、人生を変えたいと思っている人が読むと何か具体的に一歩を踏み出すヒントを与えてくれる本だと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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第60回生命科学夏の学校
8月のイベント第三弾ということで生化若手の会主宰の第60回生命科学夏の学校のレビューです。こちらも完全オンライン開催となりました。
学術系クラウドファンディングとは?
今回のシンポジウムのテーマは「クラウドファンディング」。科研費に代表される競争的資金と異なり、一般市民から研究費の支援を募るクラウドファンディングが広まりつつあります。シンポジウムではその実情や実際に研究費を獲得した方のお話を聞き、その後参加者でグループにわかれディスカッションしながらクラウドファンディング案を立案してもらうという企画です。
実際にクラウドファンディングで研究費を集めた方のお話を聞ける機会はかなり貴重だったと思います。申請書を書く苦労はありませんがその分広報活動に奔走する必要があり決して楽ではないこと、大学院生でもチャレンジ可能だが前例がない場合が多いためやりやすさは所属する組織に依存すること、応用的な研究だけでなく基礎的な研究もおもしろさがアピールできれば資金を得られることが印象的でした。
一般的な競争的資金も税金なので、国民から支援していただいているわけですが顔がみえるわけではありません。それに対してクラファンでは支援者ひとりひとりと直接関わることができる「顔が見える」研究費であるという点も大きな特徴です。業績稼ぎにあくせくしがちな研究生活ですが、「この人を喜ばせるために研究したい」と思えるのは素晴らしいモチベーションになるなと思いました。
学術系クラウドファンディングが気になったからは代表的な学術クラファンプラットフォームであるアカデミストさんのHPを見てみると現在募集中の色々なクラファンをみることができますよ!
<参考文献>
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/72237/1/JJSC24_5_ikkatai.pdf
冬眠研究の最前線
その他の面白かったお話としては、ハムスターを使って冬眠を実現する体の仕組みを研究されている山口先生のお話が印象的でした。哺乳類の一部は冬眠するというのは子供でも知っているような話ですが、それを実現する分子機構となるとほとんどわかっていないとのこと。最近では本来冬眠しないマウスで冬眠を誘導できたとの論文が発表され話題になったのは記憶に新しいところですね。低温化でなぜ長期間生存できるのか?ヒトも冬眠できるのか?これからの冬眠研究の展開は目が離せません。
<参考文献>
http://www.lowtem.hokudai.ac.jp/hibernation/styled/
オンラインでも得られたつながり
参加者同士の交流も、Remoというサービスを使ってかなり濃密に行うことができました。Remoは円卓がたくさん並んだバーチャル会場で、同じ円卓にいる人とだけビデオ通話ができるというサービスです。画面共有やホワイトボードといった機能も充実していて、グループディスカッションでは大活躍しました!交流会では他の卓に誰がいるか様子を見ながら自由に卓を移動できるというのが実際に近くて面白かったです。普段なかなか関わることのできない他大学の学生たちと生命科学を肴にお酒を飲みながら世を明かすという夏の学校の醍醐味(こっちがメイン?)をオンラインでかなり再現できたのではないかと思います。
あなたも夏学に行こう!
次回の生命科学夏の学校は愛媛での開催を予定していますが、現地でリアルイベントとして開催できるかは今後の状況次第となります。生命科学に関わる様々な研究分野の方と交流でき、毎年豪華な講師の先生方のお話が聞けるのが生命科学夏の学校(通称夏学)です。院生が多いですが学部生から参加している人も増えていて頼もしい限り。生命科学を学ぶ全ての人におすすめしたいイベントです!
来年は今年オンラインで知り合った人とまた夏学でリアルで会えたらいいなぁ!
生物物理若手の会夏の学校2020
- 理論屋さんが見ている景色
- 細胞は力を感じることができ、アクチン細胞骨格はメカノセンサーとしてはたらく(曽我部先生)
- 遺伝子ネットワークの状態を決定する遺伝子をネットワーク構造のみから理論的に予測できる(望月先生)
- ナノダイヤモンドの量子的性質を応用し細胞内微小環境の温度やpHなどを測定する技術(五十嵐先生)
8月参加イベント第2弾!ということで「生物物理若手の会夏の学校2020」の感想などまとめたいと思います。
このイベントは2020年8月24日〜26日の3日間に渡って生物物理若手の会主宰で開催され、例のウイルスの影響でオンライン開催となりました。僕がスタッフとして参加している生化若手の会の夏の学校が同週末ということもありリアル開催で両方に参加するのは難しいので、せっかくのオンライン開催を生かそうと両夏学にはしご参加しました(汗)
生物物理についてはきちんと学んだことがないのですが、自分の研究でメカノバイオロジーを考慮しないといけない問題があり、見聞を広げる必要を感じていたところです。
理論屋さんが見ている景色
印象的だったのは実験系の僕が普段関わることのない理論ガチ勢の方々の思考をちょっとのぞけたことですね。生物を完全に物理や数学の問題として捉えている。同じ生命現象を見ていても全く違う景色を見ている方々がいることを実感しました。
理論の本筋の話は全然ついていけませんでしたがう〜ん、最低限理解できる教養が欲しい...
以下特に印象に残ったお話を参考文献つきで紹介します。
細胞は力を感じることができ、アクチン細胞骨格はメカノセンサーとしてはたらく(曽我部先生)
細胞は培養する基質の硬さに応じて増えやすかったり増えにくかったりすることが知られています。つまり周囲の環境にかかる物理的な力の大きさを感じ取ることができるのです(細胞力覚)。この細胞力覚はメカノセンサーと呼ばれる分子のはたらきで成り立っていますが、その中でも重要なのがアクチン細胞骨格です。細胞は周囲の基質の硬さを調べるために基質を引っ張り、アクチン繊維にかかる張力の大きを感知して基質の硬さに応答しているのではないかという話。アクチンの果たす役割の幅広さに驚きました。
<参考文献>
https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/55/4/55_187/_pdf
遺伝子ネットワークの状態を決定する遺伝子をネットワーク構造のみから理論的に予測できる(望月先生)
生物の遺伝子は非常に複雑な制御ネットワーク関係を構築しており、その振る舞いを解明することは重要です。発生過程の遺伝子ネットワークを理論的に解析した結果、その振る舞いを決定する少数の遺伝子が導き出されました。これら少数の遺伝子のみの活性を実験的に操作すると、全ての細胞種に分化させることができました。複雑な遺伝子ネットワークでも、純粋なネットワーク構造のみから数学的に全体の振る舞いを決定する要素を予測でき、逆にそれだけで振る舞いを決定できない場合は遺伝子ネットワークが不完全であることを予測できるとのこと。実験結果をモデル化しただけの理論ではなく実験に強く提言できる数学的根拠がある理論であるところがポイントです。
<参考文献>
https://www.jstage.jst.go.jp/article/isciesci/61/7/61_283/_pdf/-char/ja
ナノダイヤモンドの量子的性質を応用し細胞内微小環境の温度やpHなどを測定する技術(五十嵐先生)
結晶中の格子に微細な欠陥があると蛍光を発する性質があるそうです。このような微細な格子欠陥をもつナノサイズのダイヤモンドを生細胞に導入することで、その蛍光から得られる情報を介して細胞内の微小な領域の温度やpHなど様々な情報を測定できる技術が開発されています。このような分野は量子生命科学と呼ばれ、今年(2020年)に第2回の学会が開催されるほど新しい分野だそうです。この分野がどのように生命科学に貢献していくのか非常にワクワクします。新技術には常にアンテナを立てておきたいですね!
<参考文献>
ナノサイズのpHセンサーを実現 -生命の謎にダイヤモンドで迫る- — 京都大学
「実験と理論の最先端と協奏」をテーマに興味深い講演を多数聞くことができました。自分があまり勉強したことのない分野だったので新鮮さが大きかったです。数理に軸足を置く人たちが生命現象をどう見ているかを肌で感じることができ貴重な機会となりまました。運営、スタッフのみなさん、先生方ありがとうございました!
蛍光顕微鏡トレーニングコースに参加しました
蛍光顕微鏡、テキトーに使ってませんか?
分子生物学系の研究をしている方なら蛍光イメージングを使ったことがない人は少ないのではないでしょうか。GFPに代表される蛍光タンパク質を共焦点レーザー顕微鏡などで観察する手法は今日の生命科学では欠かせないテクニックです。同じ実験をしても撮影した画像の質によって、得られる情報や説得力は大きく変わります。それほど蛍光イメージングは重要なテクニックであるにも関わらず、その原理などについて体系的に学ぶ機会はなかなかないのではないでしょうか。 先輩からやり方だけ教わってなんとなーく画像を撮ってるって人、多いはず(笑)
蛍光顕微鏡トレーニングコースとは
僕もそういう一人だったのですが研究内容がまさにイメージングが中心なので、もっと勉強して良い画像を撮れるようになりたいと思っていました。そこで、2020年8月17日から21日までの5日間に渡って開催された「第31回細胞生物学ワークショップ -蛍光顕微鏡トレーニングコース-」に参加しました。
例年であれば神戸の情報通信研究機構で開催されるようですが、今回は件のウイルスの影響ですべてZoomでの開催となりました。詳しい授業内容は上のリンクから見ていただきたいと思いますが、光学顕微鏡の基本的な原理から蛍光イメージングを応用した実験(FRET,FRAP,FCSなど)、さらには画像解析の基本までを体系的、集中的に学ぶ講座となっています。
使用する教科書
『新・生細胞蛍光イメージング』(原口徳子、木村宏、平岡泰 編 、共立出版)を教科書として事前に購入します。この講座のために書かれた本だそうで、この本だけでも基礎から実践まで網羅され、図や写真をふんだんに使って説明されているので1冊持っておくとずっと重宝すると思います。
購入は必須出ないですが副読本的に『ImageJではじめる生物画像解析』(三浦耕太、塚田祐基 著、秀潤社)もおすすめされており、画像解析の講座では著者の塚田先生が授業してくださいました。ImageJ初心者にもわかりやすく、めちゃくちゃ使える本です。

講座の内容と感想
講座ではこの教科書を5日間で集中的に学び、さらに座学だけでなく実習を通して実際に蛍光顕微鏡を用いたイメージングや実験をすぐに遂行できるところまで持っていくことを目標としています。オンライン開催でしたが、内容を少しでも削らないようにと尽力くださり、実習も顕微鏡の操作画面と先生の映像を切り替えながら臨場感たっぷりに行ってくださいました。
生命系で蛍光イメージングをよく使う方、蛍光顕微鏡の画像がメインのデータになる方でもっと綺麗に撮れないか悩んでいたり、データの質で周りに差を付けたい方にはおすすめです。授業時間は合計40時間ほどになりなかなかハードでしたが、ここで得た知識は研究生活における武器になることは間違いなしです!
歴史も長い講座のようで、講師の先生方の中にもかつて学生としてこの講座に参加されていたという方がいらっしゃいました。こちらのページからこの講座を含むイメージングに関わるさまざまなトレーニングコースを知ることができます。
毎日遅くまで授業してくださり、授業中もZoomのチャットで他の先生が補足説明を随時入れてくださるなど、漫然とした講義ではない先生方の情熱を感じました。それにしても阪大生命機能の先生方ってパワフルな方が多いですね!学部時代に参加した「生命機能春の学校」でも先生方が朝まで議論に付き合ってくださったのを覚えています。バイオ系で他大院進したい方におすすめの研究科のひとつですので興味ある方はぜひ調べてみてください。
イメージングを武器に研究頑張るぞ〜!